調査と研究

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マラソン中の突然死

●ウルトラマラソン前後の血液検査No.1

ウルトラマラソンは42.195kmのフルマラソンより長い距離を走るマラソンとして愛好家が急増している。このウルトラマラソンといえば100kmの距離を走るのが最もポピュラーである。長時間のハードなスポーツとして、完走できた時の達成感や充実感が魅力といわれている。しかしながら、そのハードさ故に身体の異常所見を伴うことがある。今回私は100kmのウルトラマラソン完走前後の血液検査でどれくらい異常所見が見つかるのか、チェックしてみた。

【ウルトラマラソン前後の血液検査 No1.生化学】

4月27日の奥熊野ウルトラマラソンと5月25日の飛騨ウルトラマラソン前後の血液検査データである。採血時間はウルトラ前は大会2日前の金曜日の12時前の空腹時である。ウルトラ後は大会翌日の月曜日15時過ぎに採血したものである。

  奥熊野ウルトラマラソン前後 飛騨ウルトラマラソン前後
検査項目 03.4.25 03.4.28 03.5.23 03.5.26
CPK(U/l) 136 927 111 1319
GOT(U/l) 15 33 12 38
GPT(U/l) 14 10 15
LDH(U/l) 189 226 173 237
ALP(U/l) 170 190 193 173
γ―GTP(U/l) 10 10
TG(mg/dl) 63 28 75 32
T−CHO(mg/dl) 158 133 162 128
HDL(mg/dl) 48 58 48 52
BUN(mg/dl) 16.7 22.9 13.6 19.5
CREA(mg/dl) 0.7 0.8 0.7 0.8
UA(mg/dl) 5.6 4.7 5.6 5.3
Fe(mg/dl) 127 237 67 243
T−BIL(mg/dl) 0.8 1.1 0.5 1.0
TP(g/dl) 7.4 6.8 7.6 6.8
CKMB 4.3 32.9 4.4 55.7

ウルトラ後に特に上昇した検査項目にはCPK、GOT、LDH、CKMBがあるが、これらは筋肉由来のもので長時間の運動による筋肉のダメージを表している。低下した項目はTG、T−CHO、TPがある。特に注目したいのはTP(総蛋白)である。

【ウルトラマラソン前後のデータ No2.血液学】
  奥熊野ウルトラマラソン前後 飛騨ウルトラマラソン前後
検査項目 03.4.25 03.4.28 03.5.23 03.5.26
WBC 5100 9000 5800 8900
RBC 452 415 470 409
Hb 14.2 13.1 14.6 12.9
Ht 41.7 37.6 43.5 37.6
MCV 92 91 93 92
MCH 31.4 31.6 31.1 31.5
MCHC 33.9 34.9 33.6 34.2
PLT 21.3 20.6 22.7 20.2
NEUT 58 55 61 59.1
2.3
0.6
MONO 6.6
30 37 30 31.4

マラソンでは足を強く地面にうちつけるため、赤血球が壊れ貧血になりやすいといわれている。今回のウルトラマラソン後でも同様に貧血になっている。長距離走ゆえに短期間でもこのような結果になった思われる。

【文献によるデータ】

サロマ湖100kmウルトラマラソンに参加した人のデータである。私の結果と同様に筋肉由来の酵素が上昇している。

  サロマ湖100kmウルトラマラソン
検査項目 レース前n=18 中間点n=5 レース直後n=18
CK(mU/ml) 210 791 4386
GOT(mU/ml) 20 41 109
GPT(mU/ml) 11 16 23
LDH(mU/ml) 472 917 1000
HBD(mU/ml) 178 267 331
ALP(KA/ml) 5.7 5.7 5.4
γ―GTP(mU/ml) 13 12 13
TG(mg/dl) 131 100 88
BUN(mg/dl) 21.2 24.5 32.1
CREA(mg/dl) 1.0 1.1 1.2
UA(mg/dl) 4.3 4.7 5.0

渡辺雅之ら1992、体育の科学より

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