マラソン中の突然死
●メディカルチェックについて
前回メディカルチエックの必要性について述べましたが、スポーツ選手に特有なものがあるのでしょうか。まずはスポーツ選手の突然死の原因(基礎疾患)についての報告があります(前回と同じ文献からです)。
【1984年〜1988年の5年間にスポーツ中に突然死を生じ、警察に報告があった645例】
0〜39歳 | 40〜59歳 | 60歳以上 | 全体 | |
---|---|---|---|---|
虚血性心疾患 | 20 | 61 | 58 | 139 |
他の心疾患 | 37 | 3 | 4 | 44 |
脳血管系障害 | 15 | 21 | 15 | 51 |
大動脈瘤破裂 | 1 | 2 | 6 | 9 |
呼吸器疾患 | 5 | 1 | 1 | 7 |
急性心不全 | 193 | 78 | 62 | 333 |
その他 | 25 | 0 | 1 | 26 |
不詳 | 5 | 0 | 0 | 5 |
急性心機能不全 | 31 | 0 | 0 | 31 |
合計 | 332 | 166 | 147 | 645 |
注@ 急性心不全とは剖検が施行されていないが、心臓死が推定されるもの
注A 急性心機能不全とは剖検上器質的病変がないが、心臓死が推定されるもの
別の報告としては
アメリカ 1996年 Maron
基礎疾患 | 症例数 |
---|---|
冠動脈疾患 | 3 |
肥大型心筋症 | 48 |
左室肥大 | 13 |
不整脈源性右室異形成 | 4 |
冠動脈奇形 | 25 |
心筋炎 | 8 |
大動脈解離・破裂 | 6 |
不明 | 4 |
その他 | 21 |
スポーツ関連突然死の基礎疾患 (年齢が12〜40歳の132例 )
その他運動選手におけるアメリカの突然死報告では、35歳以下では肥大型心筋症、心肥大(原因不明)、冠動脈奇形、冠動脈硬化、大動脈破裂が多く、35歳以上では80%が冠動脈硬化と言われています。よってスポーツ選手のメディカルチエックとしては心循環器系の発見が重要とされています。
マラソン選手のメディカルチエックは一般健診のものと基本的には同じとされていますが、前述しましたように、運動負荷心電図を加えることに意義があるといわれています。
【メディカルチェックの項目】
一般的なメディカルチェックの手順
1次検査 | 2次検査 |
---|---|
問診 | 心臓超音波検査 |
尿検査 | 24時間心電図 |
血液検査 | 運動負荷心電図 |
胸部レントゲン検査 | 核医学検査 (心筋シンチグラフィ) |
安静時心電図 | 心臓カテーテル検査 |
なおアメリカ心臓学会のスポーツ許可ガイドラインからマラソン参加の可否についてまとめたものがありました。これはマラソン参加における可否であり一般のスポーツ許可条件ではないとされています。その中の主要な項目をピックアップしてみました。
【循環器疾患のマラソン参加規準】
1)本態性高血圧
@140/90mmHg以上で未治療であれば不可
A拡張期115mmHg以上なら、治療され臓器障害(心、腎、眼底)がなくても不可
B拡張期90〜114mmHg以下で、治療され臓器障害がなければ可
2)虚血性心疾患
@一般的には心機能低下の重症度にかかわらず不可
A冠危険因子がなくlow risk category(左室収縮機能正常、運動耐用能良好、最大負荷で虚血性変化がなく負荷中、後に心室頻拍の誘発がない)なら注意しつつ可
3)特発性心筋症
拡張型、肥大型ともに不可
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