調査と研究

調査と研究

マラソン中の突然死

●10kmマラソンとトレッドミル負荷心電図の比較、検討

10kmマラソン大会(2003年7月27日)以後Aさんと2人で2003年8月7日トレッドミル負荷心電図検査を受けました。Aさんは初めてでBruce法で、私は2回目ですがその負荷方法(プロトコール)を変更して行いました。

☆Aさんの場合(37歳)

Bruce法による運動負荷で2分後とにステージをアップしました。Aさんは自覚症状旧ボルグ指数の13程度(ややきつい)で最後のステージまで負荷をかけました。運動負荷時間は14分11秒。心拍数最大値は170bpm。血圧最高値は206/97。最大負荷は24METS。負荷中、負荷後の不整脈はなし。

ステージ 速度(km/h) 傾斜(%) METS 心拍数(bpm) 血圧
2.7 10.0 95 148/74
4.0 12.0 101 147/78
5.5 14.0 10 114 168/93
6.8 16.0 13 134 187/92
8.0 18.0 17 153 188/91
8.9 20.0 20 165 179/95
9.8 22.0 24 170 186/108
☆私の場合(49歳)

前回はAさんと同様Bruce法による通常の運動負荷心電図を受けました。2回目はステージ7(最高の負荷)の速度まで傾斜を変えずに速度を増加して心拍数、血圧、心電図記録を行いました。ステージ7の速度9.7km/hまでは自覚症状としては旧ボルグ指数の9程度の「かなり楽である」でした。ここから傾斜を付け加えると、その症状は旧ボルグ指数の13程度(ややきつい)まで一気にアップしました。運動負荷時間は18分47秒。心拍数最大値は187bpm。血圧最高値は216/106。最大負荷は15METS。負荷中、負荷後の不整脈はなし。

ステージ 速度(km/h) 傾斜(%) METS 心拍数(bpm) 血圧
2.7 0.0 103 170/96
4.0 0.0 109 165/95
5.5 0.0 115 197/107
6.8 0.0 136 204/108
8.0 0.0 147 216/106
8.9 0.0 159 200/110
9.7 0.0 165 208/98
9.7 10.0 13 179 198/100
9.7 12.0 15 187 198/101

☆前回のBruce法によるデータ

ステージ 速度 傾斜 心拍数 血圧
0.0km/h 0.0% 95 132/111
2.7km/h 10.0% 111 171/89
4.0km/h 12.0% 128 186/95
5.5km/h 14.0% 153 207/98
6.8km/h 16.0% 182 229/86
8.0km/h 18.0% 188 231/75
8.9km/h 20.0% 194 230/93
☆トレッドミルと10kmマラソンとの運動負荷との比較

1)Aさんの場合
自覚症状の点では、10kmマラソン時は旧ボルグ指数の17(かなりきつい)までいきましたが、トレッドミル最大負荷時では13程度(ややきつい)までしかいきませんでした。心拍数も10kmマラソン時では180〜190bpmまで上昇しましたが、トレッドミルでは170bpmまでしか上昇していません。

2)私の場合
自覚症状の点ではAさん同様10kmマラソン時では旧ボルグ指数の17程度(かなりきつい)までいきましたが、トレッドミルでは13程度(ややきつい)でした。心拍数では10kmマラソン時190〜200までいきましたが、最大負荷時のステージ6で194までいきました。

3)マラソン大会のためのメディカルチェックとしてのトレッドミル負荷試験
初心者でなくベテランランナーの場合、トレッドミル運動負荷心電図では自覚症状の上で旧ボルグ指数の17(かなりきつい)までいくのは困難であると思います。実際のマラソン時では「かなりきつい」と感じるまで走ることが多いので、この負荷試験では十分な負荷とはいえないと思います。ということで、ベテランランナーの場合、メディカルチェックとしてこの負荷心電図で異常が無くても安心であるとはいえないと考えます。

☆傾斜の有無による変化

私の場合2種類のトレッドミル負荷心電図を記録しました。1回目は通常のBruce法によるもの,2回目は傾斜なしの運動負荷です。傾斜がない場合、速度を上昇しても自覚症状、心拍数ともにかなりの差がみられました。血圧は傾斜が無くても、ある場合と同様に上昇しました(程度は少し軽いです)。よって、マラソン大会においてはアップダウンのきついコースとそうでないコースとでは心臓に対する負荷に大きな差があると考えられました。

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